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房州びわと山の幸 福原農園は贈答用の房州びわを無農薬栽培している千葉県南房総市富浦町の房州びわ専業農家です。

房州びわの栽培方法


このページでは房州びわの栽培に関わる様々な作業を紹介しています。
びわの品種ごとの特性や歴史については「房州びわの品種」「房州びわの歴史」のページをご覧ください。


ページ内容(ページ内リンク)
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・整枝 ・剪定 ・施肥 ・花もぎ ・摘果、袋かけ ・収穫
・袋はがし、選果、発送 ・接ぎ木 ・植え付け ・害虫対策

整枝

 びわの木は成長が早く、放任すると樹高10m以上にもなります。また、品種によって成長の仕方が異なるので、作業性、収量を考え、それに合わせた仕立て法が考えられています。びわは木が若いうちは比較的自由に樹形を変えることができるので、今後も様々な整枝法が考えられてくると思われます。
露地びわ樹形誘引前
    ( 写真:露地びわ樹形誘引前 )
植え付けてから2年後の房州びわの苗木(大房)です。びわの枝は日の光を求めて上へ上へと延びていくので、放任しておくと写真のような逆三角形型の樹形になってしまいます。このままでは枝が混みすぎていて、それぞれの葉に光が十分に当たらなくなってしまいます。

露地びわ樹形誘引後
     ( 写真:露地びわ樹形誘引後 )
上の写真の苗木の周囲に杭を打ち、そこから紐とクリップで枝を引っ掛け誘引しました。あまり強い力で引っ張ると枝の負担が大きくなってしまうので、あまり丈夫でない素材を使って引っ張っています。この写真では平行枝もあるので、よい見本ではありませんが、この木のように三角形型になるように枝を引っ張れれば、どの枝にも日の光があたるようになります。
変則主幹形、2〜3段盃状形、低樹高仕立てなどがありますが、いずれの方法でも、車枝状に伸長する枝の処理とその芯止めの時期、枝の密度などには十分留意しなければなりません。また、枝を伸ばす空間に制限があるハウス栽培の場合は、個々の枝を下に誘引することがとても大事な作業です。




主な房州びわの整枝方法を下に紹介します。

・変則主幹形
 びわの自然の樹形は変則形です。放任すれば芯がまっすぐに上に伸び、これをとりまくように枝が分岐してきます。この分岐する枝を50cm間隔で120度ずつずらしながら各方向に主枝として配置し、芯を止めると変則主幹形になります。昔からある仕立て方で、びわ以外の果樹にも使われています。びわでは主に直立性の樹形をもつ品種の整枝法として使われています。

・2〜3段盃状形
 びわは枝の分岐が車枝状になることを利用した整枝法です。盃状形を2〜3段重ねた形です。それぞれの段に3本の主枝を配置します。それぞれの段の間を90cm前後にし、それぞれの主枝の上の空間を確保し、木全体光があたるようにつくる整枝法です。「田中」などの開帳性の樹形をもつ品種に向いていると言われています。

・低樹高仕立て
 2段盃状形をさらにコンパクトにした形です。主枝の間隔、あるいは段の間隔をせばめて樹高を2m前後に抑えます。放任しておくと枝が上に伸びていくので強制的に誘引します。作業性がよく、若い木でも花つきがよくなるため、初期収量が高くなります。しかし、大きくなる木を小さく作り変えるため、樹勢が弱くなりやすく、施肥管理には十分に気を配る必要があります。

剪定

 希望の形に整枝した期はその形と大きさを維持する必要があります。樹冠外周部の拡大部分を切り戻すこと、樹冠内の個々の枝に日が当たるように枝をまばらにすることを重点に考えて枝を切っていきます。剪定の時期は花芽分化が終わった8月下旬から9月下旬ころです。樹形を維持するために、樹頂部の枝を整理し、内部まで日が当たるようにします。主枝は下のものほど勢力が強いことが理想なので、上部の主枝の先端が下部の主枝の先端より先に出ないようにします。また、密生枝の間引き、徒長枝、下垂枝、軟弱枝の整理をして、枝と枝の間の空間を確保します。また、実がつく部分が枝の先端に多くなってしまったような結果枝は作業性が悪いので、切り詰めます。また、がんしゅ病が入ったり、キクイムシにやられたりして、枯れてきた枝は、そのままにしておくと木全体が弱くなってしまうので、枝のもとから切ります。切り口からがんしゅ病が入ることもあるので、切り口にセメダインやトップジンエムなどの殺菌剤を塗った方が良いようですが、福原農園ではあまり塗っていません。木の下の地面に木漏れ日が当たるくらいまで枝を整理します。




施肥

 びわの木の養分保有率を調べてみると、石灰が一番多く、次いで窒素、カリ、マグネシウム、リン酸の順になっています。びわが最もよく生育するのはpH5.5〜6.0と言われており、土壌改良剤としても石灰が使用されます。びわの木には細かい根が少ないため、一度に多くの肥料を吸収できません。そのため、回数を分けて肥料を与える必要があります。肥料成分のうち木の生育、収量、果実の品質などにもっとも影響が大きいのは窒素です。不足すると枝葉の生育が悪くなり、樹勢が低下します。逆に多すぎると樹勢が強くなりすぎ、花付きが悪くなり、果実に対しても、糖の低下、酸の増加、果肉の硬化などの影響が出ます。リン酸は窒素のように大きな影響はないと考えられています。カリは果実肥大に関係が深いといわれていますが、刈り草などからも補給されるので、びわ山では欠乏することはほとんどないようです。多すぎるとカルシウム、マグネシウムの吸収阻害が起きます。びわ専用肥料の配合は、一例として、菜種粕270kg、魚粕200kg、骨粉150kg、鶏糞80kg、硫安200kg、過リン酸石灰45kg、硫酸カリ55kgとなっています。8月下旬から9月に基肥を与えます。施肥量は全体の50%ほどです。花芽が伸長する時期なので、これにより開花結実の養分補給を行います。1〜2月に追肥をします。果実の肥大を助ける目的で、30%ほど与えます。残りの20%を夏に与えます。これは収穫後、速やかに樹勢を回復させるのが目的です。補助の資材として、バーク堆肥や生ごみボカシも使用しています。これらをまいておくとこれを餌とするミミズなどが地中を移動するため土に隙間ができ、ふかふかな土になります。また、排水性を良くするために、夏、もらった籾殻をびわの株元にまいています。



花もぎ(摘蕾、摘花)

 びわは放任すればたくさんの花をつけ、大量の実をつけます。そうすると個々の実が小さくなってしまいます。その場合、実に栄養を取られて枝葉が成長しないため次の年、実がつかなくなることが多くなります。これを防ぐために、房州びわでは2回に分けて着花(果)制限を行います。その1回目が花もぎと言われる作業です。花もぎは摘蕾と摘花に分けられます。摘蕾とは花、あるいは蕾の1かたまりを丸ごと取ってしまうことです。葉の量に対して花の数が多すぎる場合や、花が着いた位置が悪い場合(例えば、直射日光がたえず当たる位置では生理障害が出やすくなります)、蕾、あるいは花全体をとって、着花数を調節します。また、摘蕾をした箇所からは新しい枝(果痕枝)が分岐するため、小さいびわの木では枝つきを充実させるため、全ての花を落としてしまいます。これに対して、摘花は、上の写真のように花の塊の先端付近をとる作業です。いくつ残すかは品種によっても異なりますが、枝のような部分を2本程度残すのが普通で、1本残す場合や3本残す場合もあります。九州の産地ではもっと多く残すこともあるそうです。この摘蕾と摘花をまとめて花もぎと呼んでいて、1時期に両方の作業を行うことが多いです。行う時期は11月〜12月ころです。花もぎの様子は、福原農園の嫁ブログ「びわ農家の気持ち」の記事「秘伝の技、花もぎ始めました」でも紹介しています。




摘果、袋かけ

 摘果とは、果実が小さいうちに実の数を少なくし、樹の負担を少なくすることによって残された果実の発育をよくする作業で、びわ以外の多くの農作物でも行われています。房州びわの場合、3〜4月に、1個か2個の大きく成長している果実を残し、残った実に袋をかけます。果実の数を少なくすることにより、少ない果実に栄養が集まり、大きいびわが収穫できるようになります。庭などに植えてあるびわの樹に小さいびわしかできないのは、品種の問題もありますが、この摘果を行っていないことが最も大きな原因です。また、袋をかけることにより、カメムシなどに果実が指されたり、風で果実が葉とこすれて実が傷んでしまうことを防ぎます。びわは果実がやわらかく、葉が硬い植物なので、この袋かけをやらないときれいなびわはまずできません。また、この袋には紫外線を適度に遮る効果があり、日焼け等の生理障害を防ぐのに役立っています。また、ビニールハウスと同じ原理で袋の中の温度が上がりやすくなるため、果実の色づきを早めるはたらきもあります。
袋かけの作業の様子は、福原農園の嫁ブログ「びわ農家の気持ち」の記事「AIはびわのお仕事をマスターできるか?」(2018年)や「一万回越えたら見える世界」(2017年)でも紹介しています。



収穫

 福原農園では6月中旬に収穫がスタートします。木の上部についている実から色づいてくるので、木のてっぺん近くについている実の袋を少し切り、色づいていることを確認しながら収穫していきます。色づいていないものはそのままにして後日収穫、ということになるのですが、一度袋を切ると、鳥などに食べられてしまうことも多いです。地面から届かないところは脚立に乗って、脚立に乗っても届かないところは木に登って収穫していきます。梅雨時の作業なので雨の中木に登らなければならないことも多く、そういうときは枝が滑りやすいので注意が必要です。収穫は軸の部分をもち、軽くひねる感じで採っていくため、実に力をかけることはありません。収穫したびわは下敷きを敷いた買い物籠に入れ、振動を与えないように出荷用倉庫まで慎重に運搬します。収穫作業の様子は、福原農園の嫁ブログ「びわ農家の気持ち」の記事「収穫でびわ農家の真髄を知る 」でも紹介しています。



袋はがし、選果、発送

 袋に入ったままの状態で出荷用倉庫に運ばれたびわに、まず袋はがしという作業を行います。これはびわを袋から出し、品質をチェックして、贈答用の箱びわに使えそうなものはコンテナへ、そうでないものは食べ放題用、種用に仕分けをする作業です。熟練のスタッフは一連の動作と判別の基準が体に染みついており、その手際の良さは職人技です。(写真はよその農家で種なしびわの袋はがしをしたときのコンテナです。)コンテナに入ったびわを重さ別に分け、再度品質をチェックし、不合格なものは食べ放題用へと回されます。コンテナからびわを取り出す時にはかりが「3L」、「4L」としゃべって教えてくれるので、一昔前より選果は楽になっています。箱詰めされたびわは注文に合ったサイズの外箱にさらに入れられ、宅配伝票を貼られます。昼と夕方の2回、日本郵便のスタッフが集荷に来て、発送していきます。びわの選果などの様子は、福原農園の嫁ブログ「びわ農家の気持ち」の記事「猫でも分かる「びわマイスター(鑑定士)講座」」でも紹介しています。


 ( 写真:袋に入ったびわを取り出す作業 )







接ぎ木

 現在、ほとんど全てのびわの苗木は接ぎ木されたものです。種を植えて育てたものは品種のばらつきが大きいため、何年もかかって育てたびわが、実を収穫してみたらおいしくなかった、ということがあり得ます。接ぎ木をすると親と同じ性質をもつものが育つため、大きくおいしい実がなる樹から穂木をとり、接ぎ木をします。したがって、びわの木は地下部分の品種と地上部分の品種が違うことになります。台木としては2〜3年たったびわの木が使われます。台木用に一番使われているのは楠で、最近はシャンパンも使われます。台木を育てるときに、ごまいろはんてん病に注意が必要です。葉に斑点ができる病気で、発生すると周囲に広がるのが早く、被害が大きくなります。雨除けをして育てるとこの病気を防ぐことができます。もし、葉に斑点ができ、その斑点が周囲のびわにも広がっていくようだったら、そのような葉を全て取り、新しい葉が出てくるのを待ちます。種を撒いてから3年位で接ぎ木可能な大きさになります。2月ごろが接ぎ木に適している時期です。地面から10cmくらいの位置を横に切ります。そしてよく切れるナイフなどで緑の形成層を上部から3cmほど切れ込みを入れます。穂木は3芽くらいつけて7〜8cmにそろえ、基部を3cmほど削ります。基部から1cmくらいの反対側から45°くらいで切り落とします。これを台木の切れ込みに入れ、形成層が合うようにして接ぎ木テープで固定します。穂木が乾燥してしまうと活着が悪くなるので、水につけたり、切り口をなめたりして乾燥を防ぎます。水やりをしっかりやると、1〜2カ月で下の写真のような芽が出てきます。土が乾燥しすぎると良くないので、福原農園では接ぎ木部分に穴あきのビニール袋をかぶせ、ポットを地面に埋めています。5か月くらいして芽が出ることもあるので、気長に見守ってください。初めてやった時は成功率50%くらいでした。


植え付け

2月に、成長した苗木を植え付けます。盛り土をして植え付け、周囲を肥料の袋で囲います。これは必要ないところもあるかもしれませんが、イノシシに倒されたり、ウサギに芽をかじられたりするのを防ぐためです。びわの根は地中浅くにしか張らないので、風等の影響で斜めになりやすいです。支柱を立てて支えてやった方がいいです。びわの樹は水はけが悪いと根を張りにくいので、暗渠排水を掘ったりします。夏は草がすぐに生えてくるので、草刈りをまめに行います。また、ある程度枝が太くなったら、枝が横を向くよう、少しずつ誘引します。



害虫対策、防風林の整備等

 その他の作業としては、防風林や排水溝の整備や、コウモリガの幼虫、キクイムシ退治などがあります。防風林はだいたいビワよりも高くなりがちなので、込んだ枝を切って日照を確保します。キクイムシはカミキリムシの幼虫で、幹に侵入し、内部を食害します。放っておくと折れやすい枝になってしまい、木に登った時に危険なので、食いカスを見つけ次第、退治します。枝が食害された場所からはがんしゅ病が出ることもあるので、病気の予防の面からも、キクイムシ退治は大事です。コウモリガの幼虫も幹を食害します。幹の表面をぐるっと一周するような形で食害し、一周されてしまうと幹の先に水を運ぶことができず、その枝は枯れてしまいます。そのため、被害はキクイムシより深刻になりやすいです。また、モンクロシャチホコの幼虫が木につくと、集団で葉を食いつくすため、これも見つけ次第、退治します。ミノムシは葉の先端付近にぶら下がっていることが多いです。集団で葉、果実を食害するので、1匹見つけたら、他にもいないか、よく探した方がいいです。クワゴマダラヒトリの幼虫は葉、果実を食害します。ドクガの幼虫も集団で葉を食害するので、長そでなどを着て皮膚を守りながら、毛を飛ばされないよう、静かに葉ごと撤去します。カメムシもびわの害虫です。スギやヒノキの実の汁を吸って育つ虫なので、花粉が多く飛んだ次の年には大発生してびわに被害を与えることが多いです。チャバネアオカメムシ、クサギカメムシ、ツヤアオカメムシ、アオクサカメムシは針を果実に刺しそこから吸汁するため、びわの品質を低下させます。紙の袋を果実にかけることである程度は防げますが、袋の上からでも刺してくるため、普通の袋では完全に防ぐことはできません。福原農園では紙とパラフィン紙で2重になった袋を使用し、被害を防いでいます。
 びわの病気としては、がんしゅ病、しろもんぱ病、はいはん病、ごまいろはんてん病、さび病なのがあります。がんしゅ病が発生した箇所が見つかった場合は、その表面を少し削り、殺菌します。
 びわの木は地面浅くにしか根を張らないため、強風を受けると倒れやすいです。倒れた木は重機を使ってまたまっすぐに直すこともありますが、再び倒れてしまうこともあります。そのため、福原農園では倒れたままにしてあるびわの木も多いです。びわの木は倒れたままにしても枯れないことが多いです。
排水性が悪い場所はびわの生育が悪くなってしまうので、暗渠排水や明渠を掘ったりします。また、びわ畑周辺の防風林が大きくなりすぎるとびわの木に日が当たらなくなってしまうので、大きいものは適度に倒したり枯らしたりします。






参考文献  「びわ 房州ビワを中心とした栽培法」  中井滋郎先生 枇杷倶楽部

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